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クレーム対応が重要になっている背景

接客サービスのプロは、従来からお店、企業経営の最前線でした。お店や企業の顔であり、良くも悪しくもお客様にとってお店や会社そのものといってよい存在だったのです。しかし、社会のニーズが多様化し、環境、食や安全に対する問題意識が向上していく中で、経済活動をするお店、企業の社会的責任はますます高まっています。お客様にとって身近な存在である接客サービスのスタッフは、高度化したお客様の意識に追いつき、お客様のクレームについて共感し、経営にいかしていくという新しい責任が生じたのです。

クレーム対応をどのようにしていくか、クレームをサービス改善やお店や会社の経営にどのようにいかしていくのかは経営にとって切迫した課題であることは確かです。不祥事への対応のまずさで消えていった企業は数え切れません。居並ぶ企業幹部が頭を下げる様子がテレビ画面に映し出されることが、近年多くなりました。これは企業の倫理観が低下したというよりは社会が企業に要求する倫理観が厳しくなったのだと考えるべきでしょう。


企業不祥事
企業が社会から要求される倫理観に追いついていけずに多くの問題を引き起こしています。そして、多くのケースでは企業の対応が後手後手になり、先ほど述べたような「頭下げ」の儀式が行われます。メディアはこのときとばかりに特集を組んだりして企業の悪辣さを喧伝します。事実、企業の不祥事によって多くの消費者がつらい苦しい思いをしているのです。

多くの市民(市民はほぼお客様といってもいいでしょうが)には「企業はみんあ何か後ろめたいことをしているのではないか?」「私も企業にだまされているのではないか?」という疑念を持ってしまうのです。これは市民の知的なエンパワメントですから、悪いことではありません。しかし、企業やお店にとっては厳しい目を持ったお客様が増えるということでもあります。

何か不信なことがあればクレームをつけ、企業やお店が隠す悪事を暴こうというお客様の深層心理が形成されてきているともいえるのです。市民社会のあり方としては好ましい社会ですが、このような経営環境の中では不祥事が一旦起きれば、企業の存続の危機になることは珍しくありません。

多くの不祥事は一つのクレームから始まるといっていいでしょう。このような社会の変化を踏まえれば、「クレーム対応」は単に接客サービス職の重要な役割の一つというよりは企業の重要な核となっているともいえるでしょう。クレームをちゃんと処理し、経営にいかしていけるかが企業間競争の舞台となっているのです。

接客サービス職のプロとしては、企業やお店の経営といったより広い視点からクレーム処理を考えなければならない時代になっているといえるでしょう。また、スタッフの個人個人のスキルによってまちまちだったクレーム処理能力を一定にし、さらに能力の底上げを図ることも必要になります。

顧客満足経営
Customer Satisfaction(CS)経営が日本でも着実に浸透しつつあります。これは顧客に満足してもらうことを経営の目標の第一に掲げていく考えで、特にいまさら声高に言うほどのことでもありません。しかし、ここでいうCSでは単にお店や企業が「お客様が満足される商品サービスを提供していきます。それこそがわたくしどもの使命なのです」といった通り一遍のフレーズではなく、システムとして考えるということです。

顧客が満足しているかどうかをちゃんと確認して、満足していないのなら、どのように満足していないのか不満を言ってもらい、それを経営にいかしていくということです。このような企業、お店のシステムを整えることがCSでは必要なのです。

具体的にいえば、お客様窓口などのお客様とお店、企業のコミュニケーションメディアを整えること、さらにクレームを含めたお客様の声を経営にいかしていくための一連のプロセスをマニュアルとして整備していくということです。

お客様窓口が処理する内容は普通、商品やサービスの使い方などについて質問するようなものがほとんどで、クレームは2割程度といわれています。この2割は企業やお店にとって重要な2割なのです。商品やサービスの使い方や要望といった情報も重要ですが、より積極的に経営に反映できる情報はクレームから吸い上げられるのです。

また、マニュアル化は多くの人があまりよくないこととして受け取っているようですが、少なくともクレーム処理をする上では、かなり効率化することができます。クレーム情報は一般の営業活動や販売活動よりも切迫したものであることが普通です。対応を間違えれば、大きな火種になるかもしれないからです。このような切迫した対応をするうえでは、個人個人のスキルの差は受け入れがたいことです。すべてのスタッフが一定以上のスキルを持ち、企業、お店で統一した対応ができるようトレーニングする必要があります。

たとえば、クレームを下さったお客様への折り返し連絡は10分以内、フォローは2週間以内、現場のクレーム情報は即日報告などの基本的な決まりごとは最低限のマニュアルとしてスタッフ教育に組み込まれていなければならないのです。


以上、クレームが経営に大きなインパクトを持つようになった背景には
(1)企業倫理の社会的要求
  :社会は企業にもっと倫理観を求めるようになってきている

(2)顧客満足経営
  :お客様の満足を達成するためのシステム化
という2つの大きな動きがあるのです。

クレーム処理は接客サービスの枠を超えた全社的な問題となっています。反対にいえば、接客サービスのプロは企業経営の中でクレーム処理、顧客満足という視点から重要性が増しているといえるのです。